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埼玉県立歴史と民俗の博物館  

 
 

担当学芸員インタビュー 第3回(最終回)

 旅の楽しみ 
 -現在、駅弁はコンビニ弁当などと比べると高価で、ちょっと贅沢というか、嗜好品というイメージです。昔の駅弁の値段って、いくらくらいだったんでしょうか? 同じ駅で高級品と廉価品があったり、地方や路線によって値段の違いがあったりしたのでしょうか?
 
佐藤: 売られている駅弁の種類自体少なく、値段も大体決まっていました。戦前ですと大正期から敗戦直後まで、お弁当といわれるものはほぼずっと30銭。それに対してお寿司というのは助六、いなり寿司と海苔巻きが入ったようなものですが、それは20銭くらい。
 
そのほかサンドウィッチも結構売ってるんですけども、それは30銭とお弁当と同じくらいで助六よりはかなり高い、そんな時代が結構続きました。
 
昭和戦前期の駅そばは大体10銭でした。現在は250円くらいです。そうすると、当時の30銭は750円くらいというところでしょうか。
 
 
 -駅弁には正しい食べ方があるのでしょうか? いつも掛け紙や蓋をどうしたらいいか、迷ってしまいます。また、山手線などのロングシートで駅弁を食べてもいいのですか? なんとなく気が引けるのですが。
 
佐藤: 正直いって私もこの展示をやる前は駅弁の容器は捨てていたんですが、ちょっと大事だなと思ってこの前食べた駅弁の掛紙は持って帰りました。
 
たとえば満員電車で食べるのはよくないとか、常識でみなさん考えていると思います。TPOをわきまえて食べればいいということだと思います。
 
最近は地方の鉄道でもロングシートが出てきていますのでむずかしいところですが、個人的には特急列車とかボックスシートのローカル線で食べる駅弁がおいしいのではと。あとやっぱりせっかく電車なので、駅弁にはビールを付けて、というのがいいですね。
 
 
 
 
 展示の見どころ
 -今回の展示品で、絶対に見逃してはいけない、見どころを教えてください。
 
佐藤: たくさんの駅弁の掛紙が今回出ているんですが、その中でも埼玉県民の方なら、「幻の駅弁」と今回名付けた久喜とか寄居とか羽生とか、そういったところで売られていた駅弁のパッケージというのをぜひご覧いただきたい。こういう駅でも昔駅弁が売られていたんだという、意外な驚きがあるかと思います。
 
それと、探してみてほしいのですが、「弥生式住居跡」というものが描かれている駅弁の掛紙があります。これはこの博物館の前庭にある遺跡が描かれたパッケージですのでぜひ見てください。
 
あと映像も面白いもので、昭和32年の大宮駅の様子が流れていますので、現在の様子と見比べてみてください。
 
 
 -それ以外に、佐藤さんお気に入りの展示品があったら、教えてください。
 
佐藤: ムサシ食品のおにぎりのパッケージで、野田のさぎ山、緑色でさぎの絵が描かれているもの、これが美しい掛紙で好きなんですよ。今は野田のさぎ山にはさぎはいなくなってしまったのですが……。
 
 
 -今回の展示は、どのような楽しみ方ができるでしょうか? 佐藤さんお勧めの楽しみ方を教えてください。
 
佐藤: 掛紙は小さい紙なんですが、結構いろんな情報が詰まっていて、土地の名所が描かれていたり、当時の注意書きが描かれていたりします。そういうものを細かくみていくと自分だけの発見がある、そういう楽しみ方ができるのではないかと思います。
 
「駅弁面白いな」と思ったらあとは旅行に行ってもらって、各地の駅弁を目と舌で味わっていただく、ということになるのではないでしょうか。
 
 
 -展示を見て、駅弁を食べたくなってしまった人は、どうしたらいいですか?また、展示品で今でも入手可能なものもあるのでしょうか?
 
佐藤: 入手可能なものというと、「現代の駅弁」の大宮駅の大宮弁当などは売っていると思いますし、あとは展示の最後の方にある「ユニークな形の駅弁」でもまだ売っているものがあります。高崎駅のダルマ弁当とか、千葉駅のはまぐり丼とか、あと横川駅の釜飯とかですね。
 
鉄道博物館に行けば食べられるものもありますし、デパートのフェアなどで食べるのもいいんですが、ぜひ旅行に出かけて、電車の中で食べるのがいいのではないでしょうか。
 
 
 -最後に、佐藤さんが考える駅弁の未来ってどんなものですか?
 
佐藤: そもそもは長距離の移動の中でおなかを満たすためということで始まったと思うんですけど、それが旅行が盛んになるにつれてそこでしか食べられない駅弁というのができます。それがさらに鉄道網が発達して高速移動をするようになってきて、停車駅ではなくなるこことで駅弁がなくなってしまうこともあります
 
一方ではターミナル駅では様々な駅弁が売られ、選択肢が増えて、旅行者にとっては嬉しいけれど、その土地でしか食べられない、限定、という感覚がなくなって物足りない部分がでてきているんじゃないかなと思います。
 
ただ、それでも鉄道旅行の楽しさというのはどんなにほかの交通機関が発達しても残ると思いますし、鉄道旅行の切り離せない一部として駅弁は今後も存在感を持って続いていくのではないでしょうか。 
 
 (終)